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Quiet Minimalism reviews 'Break'

「混然とまみれながら響く悲しい旋律。圧巻。ただただ、泣けてくる。こんな音楽の形は、かつてあっただろうか。」

From Quiet Minimalism

このアルバムを聴いて想起するのはミラノのドゥオモのような巨大な建築物。美しくも物悲しい旋律、緻密な装飾のように散りばめられたノイズ、低く重く鳴るベース音、吐く息、コーラス、そしてまるで古いテープレコーダーから鳴っているかのようなストリングスに、ポラロイド写真を思わせる郷愁といった感情が惹起される。それらすべてが統合され、ひとつの音楽とし響く。このアルバムは間違いなく大傑作。

1曲目Seicheは構造として三部構成。ミュートされた弦楽器が爪弾かれながら静かに立ち上がっていく。人の息、パッドなどが配置、挿入され、突如現れる人の歌声。そして砂嵐のごとく舞い上がるノイズと重低音のベース。混然とまみれながら響く悲しい旋律。圧巻。ただただ、泣けてくる。こんな音楽の形は、かつてあっただろうか。

2曲目Lamentationでは、くぐもった音質のピアノから、歪んだパットがかぶさる叙情的な曲。フックの部分がこれまた涙を誘う。でも冗長に長引かせず、スパッと終わってしまうという潔さ。ここからまだまだ聴けたのに、というところでこの判断。きっとこういうのを、センスと呼ぶのだろう。私にはできない英断だ。

4曲目Caesura は11秒間、無音で終わるという仕掛け。

5曲目Look Into The Heart Of Light, The Silenceはカットアップされたノイズの刻む細かなリズムに、ゆったりとしたピアノが緊張感を持ったトーンで鳴り響く。音数が増え、曲はさらに美しさが増していく。

6曲目は浮遊感漂う美しいアンビエント。コーラスが差し込まれまるで天空にでもいるかのようだ。

7曲目はピアノとアンビエンスのフェードインとフェードアウトでこのアルバムが終わる。この曲にはTayler Deupreeがパーカションで参加している。

今年はこの作品を超える音に出会えるだろうか。またakariを聴き直してみよう。